可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。

水族館と傷のこと



【水族館と傷のこと】



「ここ、横浜じゃないじゃん」


3回も乗り換えて一時間近くかけて到着したのは、小田急線の片瀬江ノ島駅。

竜宮城みたいな変わったかたちの駅舎を出ると、相模湾から吹いてくる風に乗って潮の匂いがむんとしてきた。


「さすがにこんなトコまで来てる班はねーだろ?」


渚はそういってにやっと笑う。


八景島駅から来るには面倒なこの場所を、渚はあえて選んだらしい。どうやらクラスメイトに目撃される可能性がない場所で、心置きなく過ごしてやろうってつもりみたいだ。


「たしかにね」


横浜から外れた場所へこっそり遊びに行ってる班は他にもあるだろうけど、わざわざこんな遠くまで来てる班はないだろう。


「どうせ自由行動でどこ行ってるかなんて、誰もわかんねぇんだし」


だったら好きな場所に行って何が悪いとでも開き直るように、渚は海辺の方へ歩いていく。



手は、繋いだままだ。


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