可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
「江ノ島はあっちって看板出てるけど?」
渚は大通りに出ると、江ノ島へと続く弁天橋がある方とは反対方向へと進んでいく。
「……おまえ島の弁天さんとこ、お参り行きたいか?」
渚はおまえが行きたいなら連れて行ってもいいけど、という顔をする。
そういえば江ノ島で祀られてる弁天さんは女の神さまだから、カップルでお参りに行くと弁天さんに嫉妬されて破局するとか、そういうジンクスがあったっけ、なんてことを思い出す。
あたしと渚が行っても、不都合があるわけじゃないけど。
「べつに。どこでもいいけど」
「だったら今日はあっちな」
そういって渚が遠くを指さす。
等間隔にやしの木の街路樹が植えられている大通りの左手、海沿いの方に大きな屋根付きの建物が見えてくる。
「あそこへ行くの?……あれって、水族館?」
「だな」
-----------『LiLiCA』のワンピ並みにベタなチョイス。
そう思ったけど、口には出さなかった。
今日の渚は機嫌が良さそうで。その顔を眺めてるのも悪くない気がしてたから。