可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
隣を見上げると、水槽の高い場所で揺れる水面が反射して、渚の顔にも不規則に青い光が散っていた。
王様は日の当たる場所がお似合いだと思ってたのに。
ほの暗い中で見る渚の顔には、いつもとは違う大人びた陰影があって。なんだか妙に落ち着かない気分にさせられる。
気まずいようなくすぐったいような。まるで渚も同じ気持ちを味わっているかのように、すこし熱っぽくささやいてくる。
「今日のおまえいいな。……なんか素直じゃん?」
言いながら、渚のあたしの手を握る力が一瞬強くなる。触れ合った皮膚と皮膚から伝わってくるその手の温度もどこか熱っぽい。
「………渚もね。水族館とか、デートコースにしてはベタすぎで捻りがないと思ったけど。思ったより悪くないかもね」
「ったく、人が褒めた途端それかよ。ほんとおまえ、可愛くねぇな」
そう言いつつも、渚は文句を言ってる顔なんてしてなかった。たのしそうな顔して、あたしの鼻をきゅっと摘んでくる。
「………っ何。やめてくれない?」
子供っぽい仕打ちに抗議してやるけど、渚は笑って受け流してくる。
ふたりでしばらく無言で水槽を眺めた後、渚はあたしの手をひいて次のブースへと進んでいった。