可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
◇ ◆
「……いい加減さ、他ンとこ周わんねぇ?」
熱帯魚とかペンギンとか定番な生き物をいろいろ見て周った後、ふれあいコーナーに来ていた。
ウニとかヒトデとか展示してある海の生き物に自由に触ることが出来るブースで、あたしは水槽に貼り付いて水底を這うように泳いでいたサメにタッチして、その感触をたのしんでいた。
「渚は触らないの?サメ肌、ほんとにザラザラしてて面白いよ」
「………ってかおまえ、よくそういうの触れるな」
渚が気味の悪いものを見るような目で見てくるからおかしかった。
「動物怖い?以外にビビリなんだ?このちっちゃいサメ、べつに噛んでこないよ」
「犬猫はフツーに嫌いじゃねぇし、家にもいるけど。……そういう意思の疎通が図れないような生き物は正直パス」
そういって渚は一歩離れたところに立ってて、水槽に近寄って来ない。
「大人しくてこんなかわいいのに」
ふれあいコーナーの水槽にいるのは、ネコザメっていう見た目も名前もかわいいサメ。
目がネコ目なうえに、顔でっかちな体型が不細工で、のろのろ泳ぐ姿もなんだか癒し系。触れる指先に感じる、ザラザラとヌメヌメが合わさった奇妙な感触も面白い。
ネコザメをよしよししてると、自然と口元が緩む。
「……おまえがそんな楽しそうな顔するなら、カメラ持ってこりゃよかった」
渚がため息まじりにひどく惜しそうにそんなことを言い出すから。
「じゃスマホ使えば?撮らせてあげるから」って軽口を叩いてやると。
「じゃ、ちょいこっち向け」と本気で渚がスマホを取り出してきた。