可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。


「……渚、待って」


備え付けの水道で急いで手を洗って、渚を追いかけながら慌ててリュックからハンカチを取り出すと。ハンカチのタオル地の繊維に引っ掛かって、中に入れてあったものが勢いよくリュックの外に投げ出された。



ちょうど渚の足元に落ちたそれを見て、渚が眉を跳ね上げた。




床に落ちているのは、渚から渡された『LiLiCA』のネックレスだ。




今日着てる服には合わないし、持ってくるつもりなんてなかったのに。

今朝ワンピースと一緒に壁に掛けてあるのを見たとき、とっさにこれだけリュックの中に入れてしまっていた。



自分でも説明が付けられない行動だったから、渚に見つかってしまったのは気まずい。

渚は絶対なにか言ってかからかってくるはずだ。




-----------ほんとになんであんなもの持ってきちゃったんだろ。



後悔と恥ずかしさでくちびるを噛んで俯く。



-----------大丈夫。何を言われてもいつも通り冷めた顔してればいいじゃん。



そう覚悟して待つけど、渚は何も言ってこない。

黙ったまま、あたしの代りに落ちたままのネックレスを無言で拾い上げた。



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