可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
「学校の時のダセェ恰好じゃなくて。今日みたいに外見ちょいいじって、それでもし可愛げまであったらおまえ無敵だろ」
「………何言ってんの。なワケないじゃん?ただの劣化ブスだし」
「ブス言うな」
渚はいかにも不快げにあたしの言葉を跳ね退けようとする。
あたしが笑って流そうとしても、今日の渚はそれを許してくれない。
むしろ追い込んでこようとする。
「おまえさ、抵抗あんの?人前で顔出したりすんの」
渚はそう言うと、体をあたしの方に傾けて、手の甲であたしの額の左側にやんわり触れてくる。
厚めの前髪を斜めに流すタイプのウィッグのおかげで、うまいこときれいに隠れてるけど。
その下には、生え際からこめかみに向かって一直線に伸びた傷がある。
渚の指先が、そっとその傷に触れてきた。
「これ。男にDVされた?」
なんとなく。
HRデーに来ると決めたときから覚悟していたことだけど。
渚はいつも踏みとどまっていた場所から、一歩、あたしの内側に踏み込んできた。