可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。

「………中3とき、DVされたってのはアタリ。男とこじれたってのもアタリ。……でもその人、あたしの彼氏だったわけじゃないし、DVもその人にされたわけじゃないよ」

「じゃあ、これは-------」


聞きたい顔をしてるくせに、渚は“誰にやられたんだ?”って言葉を飲み込んだ。

渚はあたしが自ら話そうとするのを待とうとしている。



待つことで、あたしの扉を開こうとしている。

自分が開いた分だけ、あたしにも扉を開けて欲しいってそんな顔してる。




「……おまえさ、もうモテんのコリゴリとか?」


渚は無理やりこじ開けようとはしない。言葉でそっとあたしをノックし続けてくる。


「男絡みで面倒なことがあったから、『ぼっち』キャラやってんのか」

「……ってか、前別にそんなモテてたわけじゃないし。今だって、もう傷モノなわけだし」



『傷モノ』って言葉に、渚が過敏に反応するから。苦笑しつつもいちおう補足してみる。



「意味違うから。まだ処女だけど。……女なのに顔、これあるじゃん?傷モノっしょ?」

「……そういう風に自分落とすんじゃねぇよ」

「でも実際、こんな傷持ちのクセにモテ系狙ってみるとか、なんか今更っていうか痛々しいじゃん?」



「ニカ」



叱責するように渚が鋭くあたしを呼ぶ。


< 151 / 306 >

この作品をシェア

pagetop