可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
額の傷が、あたしが思うほど目立たないって分かってる。
でも消えることがないこれを見たとき、
あたしの人生なんて所詮こんなもんなんだって、刻印されたような気分になった。
一生あたしは鏡を見るたびに、そういう気分に落とされるんだって。
この傷はあたしの弱さとか狡さとか汚さの象徴。
なのにそのみじめな傷を見て、渚は「堂々としてりゃいいだろ」なんて言ってくる。
「お前、この顔じゃ周りの女不利過ぎんだから、ハンデ付けてやるくらいでちょうどいいだろ。ってか、この程度の傷、ハンデにもなんねぇよ」
まるでそれが誇るべきなにかであるかのように、渚がその傷に触れてくる。
「おまえ中身と違って外見毒なさ過ぎなんだから、むしろハクがつくんじゃねえの?」
「なにそれ。男の勲章みたいな?」
あたしの軽口に、渚は思いもよらないくらいマジな顔して頷く。
「古いけど、おまえ『ランボー』とか『ロッキー』とか言ってわかるか?」
「……観たことないけど。満身創痍でスタローンが戦いまくってる映画だっけ?」
「よく知ってんじゃん」
「でもさ、」
ああいうのは戦って得た傷だからカッコいいんだ。
あたしの傷は一方的にやられただけの、ただの負け犬の証みたいなもんだから。
「……あたしの傷は、全然カッコよくなんかない」
「そんなことねぇだろ」
渚はあたし自身が「もういいや」って投げ出して諦めたあたしを、どうにかして高いところへ引っ張り上げようとする。
「無理に隠したりしないで堂々と晒してりゃ、これもちゃんと戦ったカッコいい証になんだろ」
---------そんなこと、あたしは考えたこともなかった。