可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
いつもキスをはじめるときの距離に渚の顔があった。
でも渚はそれ以上顔を寄せてこない。まるであたしからのキスを待つようにただじっとあたしを見つめている。
---------渚からしてくれたらいいのに。
キスを求められてるって感じたけど、あたしは自分から渚との間にある距離を詰めることが出来ない。
だって今渚にキスしてしまうと。
あたしと渚の間で、キスの意味が今までと違うものになってしまいそうな。そんな気がして。
---------でも今渚とキスがしたい。
渚があたしじゃなくてリア先輩のものだとしても。
渚の言う『ずっと見ててやる』の『ずっと』が永遠って意味なんかじゃなくても。
それでもいいからキスがしたい。渚に触れたい。
でもまたキスの仕方が急に分からなくなってしまって、瞼を閉じてキスを誘うことが出来ない。
その理由を知りたくない。今は考えないでいたい。
視線を重ねたままでいると渚があたしの頬にくちびるで触れてきた。こめかみから額、生え際へと傷をなぞるように流れていって、最後に瞼にたどり着く。
渚のくちびるは、そっと触れてあたしの瞼をふたつとも下ろした。