可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
「-------こら、リナちゃん。だめでしょっ」
「ねえ、なんで?」
すこし離れた席から駆け寄ってくる母親の制止も聞かず、リナと呼ばれたおませな女の子はあたしたちに何度も「どうして」と聞いてくる。
「なんでいやなの?おにいちゃんのことがきらいだからたべてあげないの?そんなの、おにいちゃんがかわいそうだよっ!」
不安そうな顔して聞いてくる女の子に、七瀬はいかにも子供受けよさそうな笑顔を見せた後。
「違うよ。ちゃんと仲良しだよ」
そう言って、手に持っていたチュロスをあたしの口元に差し向けてきた。
「ほんとに?」
「うん、本当。おにいちゃんたちね、今からこれ一緒に食べようとしてるとこなんだ。ね、崎谷さん?」
そういった七瀬の目に促され。女の子の期待するようなまなざしにも負けて。
やらなければ収まりがつかなそうな雰囲気に押されたあたしは、七瀬に「あーん」をされる恰好で差し出されたチュロスにかじりついた。
-----------何これ。バカップルみたい。
あたしはそう思ったけど、あたしたちを見守っていた女の子は「よかった」といわんばかりに幼い顔を綻ばせて、なぜだかひどくうれしそうに母親のもとへとかけていった。
その子の母親に遠巻きから「すみません」って何度もぺこぺこ頭を下げられつつ、かじったチュロスを咀嚼するけど。
味を感じない。口の中はざらざらした砂糖の食感しかしない。