可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。

むずがゆくて気まずい雰囲気のまま、向かいあって黙々とランチを食べていると。
あたしの様子をちらちら窺いながら、七瀬が「そういえば」と話を切り出してきた。


「今日のHRデーが終わったら、次はそろそろ文化祭の企画書立ち上げるみたいだね」
「……冬木がそんなこと言ってたっけ」


あたしに恥ずかしい思いをさせた七瀬に、まだちょっと腹が立っていたけど。
いつまでも「あーん」にこだわっていると思われるのも嫌だったから、出来るだけ平静なふりして相槌を打つ。


「崎谷さんは何かやりたいものとかってある?模擬店とか展示とか。……あとは劇とか」
「べつにあたしはやりたいものなんてないし、良案もないけど」


当たり障りのない話題から、七瀬の話がどこへ向かおうとしてるのか。
それを見極めてやろうと思いながら、七瀬の話に付き合ってみる。



「山根さんとかニクちゃんは、『コスプレ喫茶』がやりたいとかって言ってたっけ」

「言ってたね。陸人が着ぐるみ系で、山根さんはメイドやりたいって。崎谷さんは着たいものある?」

「ない。コスプレ興味ないし」

「うん。けどメイド系とか、崎谷さんすごい似合いそうだけど?」



七瀬は「メイド姿を見たい」とでも催促するような顔して聞いてくる。

七瀬にしろ、『LiLiCA』のワンピを選んだ渚にしろ。男子ってそんなにフリフリのあざとカワイイ系が好きなんだろか。


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