可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
「お姉さんのってことは、お姉さん、コスプレーヤーなの?」
「違う違う。渚のお姉さんはお祭りとかイベント事が大好きで、ハロウィンとかクリスマスのときだけめちゃくちゃ仮装に凝るタイプなんだ」
「ふーん」
なんか姉弟でも、いつも冷めた感じの渚とはタイプが違いそうな人だ。
「去年は商店街が企画したハロウィンイベントですごいグロテスクなゾンビに扮して、町内じゅうの子供たちを号泣させてたよ。ぐちゅぐちゅの傷口とかどろどろになった膿のメイクがすごいリアルでさ。俺もニセモノだってわかってても気分悪くなったし」
「そんなに?実はプロとか?」
「うーん。ある意味プロっていえばプロかな……?」
あたしが聞くと、七瀬は渚のお姉さんのことを教えてくれた。
「渚のお姉さん、医者なんだ。手先器用だし、傷の再現メイクとかはほんとに上手だったよ」
「………そっちのプロ?」
「うん。正確には研修医?専修医?まだ医者になる前の過程みたいなんだけど。医学部生だった頃から成績優秀で、しかも余裕で男と肩並べられるガッツもあって、結構有名だったらしいよ」
渚が言っていたとおり。たしかに男前なお姉さんだ。
たぶん渚は口でいう以上に、お姉さんのこと尊敬しているんだろうなって。そんなことを思う。