可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
「あたしのことなんて、七瀬くんにとってはどうでもいいことでしょ?……興味本位な顔されるのは不愉快だよ」
言い逃げするように、トレイを持って立ち上がった。サラダもアイスティーもほとんど減ってないけど、食欲なんてもともとないしもう完全に食べる気が失せていた。
返却口に押し込むと、あたしはガラス戸を開けて続きになってるオープンデッキに出た。
相変わらず風が吹いて、太陽に照らされた海面が光を散らすようにキラキラしていた。
その海の向こうにこじんまりとした島が見える。
-----------あたしも向こうへ行きたかった。
渚や七瀬があたしの中学時代を知っていることなんてしらされないまま、ただ今日はHRデーの空気を楽しんでいたかったのに。
「崎谷さん、ごめん」
大きな音を立ててガラス戸を開けながら、七瀬が後を追ってきた。
「崎谷さんが中学のときのこと、俺、誰にも話したりしない」
「………別に好きにすればいいよ。有名人なわけじゃないし。誰もあたしのこと興味ないっての」
「でも崎谷さんは誰にも知られないままでいたかったんでしょう?……たまたまにしろ、気付いてごめん」
そういって七瀬は頭を下げてくる。