可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
七瀬の体を押し返したいのに、身が竦んで動けない。
こんなとき、自分がどうしようもなく非力な女子なんだということを思い知らされる。
「………やめ…て…………」
『やめて聖ちゃんっ……!!』
か細く吐き出した言葉と、脳裏で響いた悲鳴が重なって、ハウリングしたようにキーンと鋭い音があたしの頭を貫く。
『どうして?なんでこんなことするのっ?』
------------やさしかった聖人が、やさしい笑みをうかべたまま、あたしを見下ろしていた。
『……いやっ……お願い、やめて………聖ちゃんやめてよ……ッ』
視界が真っ白になって気が遠くなる。
膝から力が抜けて、崩れた体が重力に引き寄せられる。
だけどあたしの体は地面に叩き付けられる前に、なにかあたたかいものに包まれる。
「………渚…」
呆然としたような七瀬の呟きを最後に、あたしの意識が落ちた。