可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
その日から渚は、思わぬタイミングであたしにキスを仕掛けてくるようになった。
日直で戸締りをしていちばん最後に教室を出て行くとき。
人が降りてくる気配のする階段の踊り場。
職員室に入る直前のドアの前。
死角になる廊下の曲がり角。
学校で誰かに見つかりそうで見つからない、そんなぎりぎりのシチュエーションで渚とあたしはキスを重ねていった。
どんな状況でキスされてもあたしは泣くどころかちっとも動揺しないものだから、
渚のキスはどんどんエスカレートして、シチュエーションもやり方もえげつなくなった。
そのうち渚はあたしを泣かせようとするよりも、あたしと共犯になることにハマっていった。
『どれだけ度胸の要る場所でありえないキスをすることが出来るか』
いつしかあたしと渚はまるで悪ガキどもがチキンレースをするように、そんな遊びをひそかにたのしむ関係になっていた。