可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
「由太。おまえ懺悔とかそういう話はとりあえず後にしろ」

七瀬との会話が途切れると、隣に座ったままの渚がすこし不機嫌に言ってくる。

「今はこいつの体調が優先だろ」

そういって渚は立ち上がる。

「ニカ。何か飲み物買ってくるから。おまえ何なら飲めそう?」

聞かれたとたん、口の中のざらざらした渇きを感じて「え?……甘くないもの……とか?」と答えると。

「………いいよ、俺が行くよ」

カフェスペースに向かおうとしていた渚を七瀬が押し留めた。渚は顰め面をする。



「馬鹿。見張ってねぇとおまえ出し抜かれるぞ」
「------馬鹿はそっち。分かってて言ってるんだから、さっさと行けよ」

「譲る意味あんのか?どうせこっちも似たような勝率だぞ?」
「知るか。それでも俺はもう、玉砕済みだから」


向かい合った渚と七瀬は、あたしひとり蚊帳の外みたいな雰囲気で話し続ける。


「じゃあ遠慮なく。……悪いな、由太」
「謝るくらいなら。……約束前の時間に来るなよ、ほんと。……二度目はないから行くなら早く行けよ。飲み物、買って帰ってくるまでにまだここにいたら、俺はほんと遠慮しないからそのつもりでいて」


七瀬は痛みを感じたような顔してあたしをちらりと見ると。何かを堪えるような顔をして、足早にカフェスペースの方へと歩き出していく。


その背中を見送りきらないうちに、渚が奪い取るような強さであたしの腕を掴んできた。

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