可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
「ついてこないで……ッ!!」
「んな怒るなよ」
「怒るに決まってるでしょ!!」
「待てよ」
「嫌ッ!」
おんなじやりとりを何度も繰り返しているうちに、あたしの声はどんどん鼻声になっていく。
「おい。………おまえ泣いてんのか……?」
あたしの様子がいつもと違うことに気付いたのか、渚は焦ったように言ってあたしの正面に回り込んでくる。渚はあたしの顔を見ると驚きで目を見開いた。
「………マジかよ」
渚の言動の所為で心の中を引っ掻き回されたあたしは、いつの間にか目尻から流れ落ちた涙で頬を濡らせていた。無様なあたしを見て、渚はどうしたらいいかわからないとでもいうようにうろたえる。
「おまえこういうとき、泣くより怒り狂うタイプだと思ってた」
「………だって……」
情けなくも、鼻の奥がつんと痛んだ。
「渚、急に……触ったりするから…………」
自分でも思いがけないくらい、そのことにショックを受けていた。
渚は女の胸ぐらいいくらでも触ったことがあるのかもしれないけど。あたしには無理だった。
もともと他人に自分の体を触られるって行為は、あたしの中の嫌な記憶を刺激するのに、悪ふざけのキスをしてるときみたいな冗談とか遊びの延長みたいなテンションで対応するとか、そんな器用なことあたしには出来なかった。
「………何食わない顔で、どうでもよさそな顔して触られるとか………無理だし……」