可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
ナギサノコトガスキ。
渚から突きつけられてしまったその言葉が、腑に落ちてしまう前に。その甘酸っぱい気持ちに酔いそうになる前に。あたしは間髪入れずに答えた。
「やだ」
「………即答かよ。さすがニカ、期待を裏切らない返事だな、ったく」
渚はたいして失望した様子もなく、やれやれと言わんばかりに鼻を鳴らす。
「おまえ俺がどれだけ譲歩してやってんのか分かってんのかよ。ほんとニカは強情だよな」
「ニカじゃない」
「じゃ仁花」
「勝手に名前で呼ぶな」
「俺のことは名前で呼んでんだから、おあいこだろ」
ぐっと言葉を詰まらせると。渚はあたしをみつめて、ふっと目元を緩ませた。
「おまえさ、俺好きだろ」
「自惚れんな、馬鹿」
「あっそ。俺はお前が好きだけどな」
素直に認められる俺の方がおまえよりも人として格上だ、といわんばかりに渚はふてぶてしく言ってくる。
「おまえってさ、秘密主義で面倒くさくてひねくれてて、上等な顔してるくせに自分ブスって思いこんでる馬鹿で。ときどきキス魔だし、言動ビッチで無自覚なのか意識的なのか人のこと煽りやがるし、性格悪くて外見以外はほんとどうしようもないクズだって思うことあるけどな」
「………よく告ってる相手にそこまで言えるね」
「そういうの全部ひっくるめて可愛いとか思ってるからな。病気だな、これ」
そういって渚がいつもより遠慮がちにあたしの肩に触れてくる。あたしが拒みも驚きもせずに渚に触れられることを受け入れると、渚はそっとあたしの体を自分の腕の中に引き寄せてきた。