可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
変わっていくもの
◇ ◆ ◇
渚の最寄り駅は三條駅のはずなのに、渚はあたしと一緒にその先にある寿々野台で降りた。そしてマンションに向かって歩くあたしの隣に、当たり前のように並んでくる。
「おまえさ。来週はまたもとに戻んの?」
渚は横目であたしの姿をチラ見しながら聞いてきた。
「何が?」
「恰好。ダサくねぇのは今日限定なワケ?」
「……そのつもりだけど」
渚が明らかに面白くなさそうな顔をするから、つい語勢を強めて言っていた。
「悪い?渚はあたしにこんなハンパな時期に高校デビューしろって言いたいの?」
「つぅかおまえの場合、あざといブスキャラやめて、普通になれってんだよ」
「……でもこういう感じで学校行ったら、渚今日みんなの前でいちゃついてた相手があたしだって、クラスのヤツらにバレんだよ?」
喧嘩腰なあたしの言葉に、渚はむっとしたように顔を顰めて吐き捨てた。
「そんなの覚悟の上だっつの」
腹を立てたように言いながらも、渚はあたしの手を取ってぎゅっと握ってくる。その手を繋ぐ強さが、なにか渚の固い決意表明のように感じられて、あたしは手を振りほどくことも反論することも出来ない。
まるでその大きな手の中に握り締められているのが、あたしの手なんかじゃなくて心臓であるかのように、あたしの胸はギュッと締め付けられる。