可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。


狭い箱の中でひとりぼっちになると。




不意に聖人の声が聞こえてきた。




『ニカみたいに可愛いだけが取り得の、ひねくれたどうしようもない女の子の傍にいてあげられるのは僕だけだよ。僕だけはニカがどんなに悪い子でも見捨てない』


-----でもね、聖ちゃん。渚に抱き締められるの、すごく気持ちがよかったの。


『でも僕以外の人は、みんなニカから離れただろ?両親も、友達も、生徒会のメンバーも、みんな』


-----わかってるよ。どうせ聖ちゃんは、渚もいずれあたしから離れるって言いたいんでしょう。


『僕だけがニカの味方だよ』


-----そんなのわかってた。親からも見捨てられたようなあたしを、誰もほんとに好きになってはくれないって。でもね、渚はあたしがクズでもいいって言ってるんだよ。


『ニカ。恋愛とかそんな不確かな関係に寄り掛かるのは不安じゃないのか?……僕とニカなら、そんなものとは違う関係になれるんだよ』


-----そうかもしれないね。聖ちゃんとだったら、あたしは2人だけの完璧な世界にいつまでもいられたのかもしれない。




「けどね、聖ちゃん。あたしは真奈美さんが聖ちゃんを思うような強さでは、聖ちゃんのことを思えないんだ……」







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