可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。

『仁花ちゃんってさ、絶対自分がこの世でいちばん可愛いとか思っちゃってるよね』
『そうそう、男はみんな自分の言うこと聞くとか思ってそう。痛いよねあの子』


--------仲がいいと思ってたのに、友達は陰であたしのことをそう言っていた。


『いいの。あの子はビジュアル担当のただのお飾りだから、たいした仕事振らなくても』


---------精一杯務めてたと思ってた生徒会でだって、そんな風に言われてた。


『もうこれ以上パパを困らせないでくれ。どうしておまえはいつもいつもえり子のことを苦しませたりするんだッ』


--------そう言ったきり、パパは一度もこのマンションに会いに来てくれてない。





あたしはどこにも誰にも受け入れてもらえない。

また誰かと仲良くなっても、どうせすぐに離れていく。
なにかを頑張ろうとしても、どうせ誰にも認めて貰えない。


同じことが繰り返されるだけ。


渚が離れていった友達やパパとは違う保障なんてどこにもない。


聖人の言う通りだ。変わらないでいてくれたのは、聖人だけ。
いつも変わらず傍にいてくれたのは、聖人だけ------。





「僕は意地悪じゃなくて、ニカが傷つかないために言ってるんだ。君はどうしようもない女の子なんだから、簡単に見捨てられてしまう。だから気まぐれに君にかまって君を傷つけるような人たちとはもう係わるべきじゃない」


そう言いながら、聖人はあたしの前開きのブラウスのボタンを全部外していく。下に着けていたビスチェが露わになると、聖人は苛立たしげに顔を顰めた。


「こんないやらしい下着を付けるなんて。……まったく、ちょっと目を離すと君は本当に僕の言うことを聞かなくなるんだな。……今脱がせてあげるから、背中を向けて」



言われた瞬間。

まるで暗示から醒めるかのように、はっきりと思った。



(あたしには聖人しかいないんだとしても。でも。こんなのは、絶対に間違ってる)

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