可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。

「ニカ?いんのか?」


渚の足音が寝室に近付いてくる。そのタイミングで聖人はいきなりあたしにキスをしてきた。


「……っ」


見ないで。お願い、渚。あたしを見たりしないで。


廊下からこちらを覗き込んだ渚は、立ったまま、信じ難いものを見るかのように硬直した。




終わった。もうこれで全部終わりだ。

渚から軽蔑されて嫌われて。これであたしの全部が終わるんだ。



-------でもこれでもう本当の意味で、自分の何もかもを諦めることが出来る。



そう思って目を閉じると、目尻に溜まっていた涙がこぼれ落ちて頬を濡らしていく。

次に目を開けるとき、もうあたしはほんとうに何もかも失ってるんだ。
この涙が乾くとき、もう二度とあたしは渚の傍にはいられなくなるんだ。


もうこんなあたしなんて、ゴミのようになってしまえばいいんだ。


そう諦めて体を投げ出す。そのときだった。



「………ニカから離れろ」


聞いたこともないくらい低く尖った渚の声が聞こえてきた。


「てめぇ離れろっつってんだよッ!!」


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