可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
「あははっ、そりゃ災難だったわねぇ。こんな美男美女カップルだもの、年頃の子だったら羨ましくて意地悪のひとつもしたくなっちゃうだろうねぇ。おばちゃんも若い頃はそりゃ美人で苦労したから、同情するわよ」
「はいはい、よく言うよ。おばちゃん、むかし三条商店街の『食欲小町』とか呼ばれてたんだろ」
「あらま。『小町』は美人の称号なのよ?………ほらお嬢ちゃん、これ履いて元気だしなさいよ」
おばさんはそう言いながらビーサンみたいな形の和柄のサンダルを二足出してきてくれた。鼻緒のところに満月とウサギがデザインされてて、赤いのと青いの、色違いのお揃いだ。
「いくら?」
渚が財布を取り出そうとするとおばさんはそれを押し留める。
「サンダル代くらい持ってるっての。こんなおんぼろ靴屋、俺が払わなかった所為で潰れたとか言われても迷惑だし」
「まあ。相変わらず憎たらしいこと言うわねぇ。……でもおあいにく様、ウチのお義父さんの財産分割の話がようやく決着ついてね、今多少潤ってるのよ。それもあんたのとこのお父さんのお陰よ。悟先生によろしく言っといて頂戴。ついでにまた財産のことで揉めたらよろしくねって」
おばさんはそういうと、躊躇うあたしたちの背中を押してまた豪快に笑った。
「ほら。渚ちゃん。暗くなる前にもう一度デートにでも行って、自慢の彼女を慰めてやんなさいよ」