可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
◇ ◆ ◇
おばさんに言われたからってわけでもないんだろうけど。渚はあたしの手を引いて歩き続け、商店街の先にある公園にあたしを連れて行った。
池と遊歩道が整備された大きな公園で、ボール遊びや鬼ごっこに夢中になってる子供たちや、ランニングや犬の散歩をたのしむひとたちの姿があった。
渚はあたしをベンチに座らせると、すぐ傍の自販機で買った缶を差し出してくる。
「カフェオレとミルクティー、どっち?」
ほんとは渚に迷惑を掛けとおしているあたしがお金を出したかったけど、おごろうにも財布も何も持たずに部屋を飛び出してしまったからそれも適わない。申し訳なく思いつつ、ミルクティーの方を受け取る。
あたたかい缶だった。手のひらに包んでいると、その温みが胸にじわじわ染み込んでくる。
「……ありがとう、渚」
この感謝の言葉がおごってもらった缶のことだけをいっているんじゃないとわかったのか、渚は固い表情になる。
「……よかった。間違ってなかったみたいで」
よく意味がわからずに渚の顔を見つめていると、渚は苦笑する。