可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。

「もしかしたら嫉妬のせいで俺の目にはおまえがヤられそうになってるように見えてただけで、本当はおまえとあいつは相思相愛だったんじゃないかって。……だとしたら悪者なのは俺の方じゃんって、そう思いそうになってたから」


まだわずかにその不安を払拭出来ずにいるのか、渚の言葉にはいつものような強さがない。


「………違うよ。渚は。………………渚は、悪い奴じゃない」


ほんとうは渚はあたしを助けてくれたヒーローだって言いたかった。けどあたしの口からは控えめな言葉しか出てきてくれなかった。それでも渚はいくらかほっとしたような顔をして、あたしに聞いてくる。


「話せよ。あいつ何?」
「………………金以外が目当ての男………?」


ふざけたいわけじゃないのに、上手く説明することが出来ない。


「アホか、何やってんだよおまえ。ストーカーか?いつから付きまとわれてんだよ」


渚は苛立ちをぶつけるように飲み終えたばかりの固いスチール缶を、両手でグッとへこませる。


「やっぱあいつ、おまえの知り合いなのかよ」
「……………うん」

「この馬鹿ッ!!何油断して自分のマンションに入れてんだよ。ほんと馬鹿じゃねぇの」



あたしが招きいれたわけじゃない。でももし聖人が正面から訪ねてきたとしても、追い返すことが出来たかと問われれば、あたしは自信を持って頷くことはできない。

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