可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
◇ ◆ ◇
渚の家は、テレビドラマでしか見たことないような、昭和の雰囲気のある古いおうちだった。愛さんは年季の入った押入れからふかふかの客用座布団を引っ張り出すと、その上にあたしを座らせてくれた。
「念のために聞いておくけど。渚、あんたがこのか弱い女の子泣かせちゃったわけ?」
途端に渚は怒り狂いそうになる。
「はあッ?あんたな、冗談でも言っちゃ悪いことがあんだろ。俺はな、こいつを助けて…」
「ねえ。あなた確か……崎谷仁花ちゃんだよね?」
愛さんは渚の言葉をぶった切ってあたしに聞いてくる。
「覚えてないかなあ?あたしさ、仁花ちゃんが中学で生徒会に入ってた頃、何度か会ってるんだけど」
「………『後星会』の、水原愛先輩、ですよね……お久し振りです……」
あたしの言葉に、愛さんは「覚えててくれたなんてうれしいなあ」と言ってすこし渚に似たきりっとした美貌に笑みを浮かべる。でもその顔をすぐに翳らす。
「折角可愛い後輩に会えるなら、もっとたのしい状況だったらよかったんだけど。……今話、聞いても大丈夫?それとももうすこし落ち着いてからがいいい?」
「……大、丈夫です……」
「何があったのか、今自分で話せる?」
あたしが黙り込むと、愛さんは根気強く尋ねてくる。