可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
「何かトラブルがあったんだよね?」
あたしは頷いて、返事をする代わりに愛さんの前でパーカーのファスナーをのろのろと開けた。
ブラウスのボタンが全部開けられてて、その下の脱げそうになってる下着を見て、愛さんは息を飲んだ。渚は見ていられないとばかりに眉を顰めて顔を背ける。
「合意じゃないことをされたの?……されそうになったの?」
弱々しく頷くと、愛さんの目付きはいっそうきつくなる。
「警察には?」
首をちいさく左右に振る。愛さんの顔はますます強張る。
「……じゃあ相手は?知らない男?知ってる男?」
その質問だけには頷くことも首を振ることも出来ずにいると、それでも愛さんはあたしの顔色を正しく読み取って言った。
「知ってる人だったんだ。……じゃあ行こう。こういうことで警察行くの、恥ずかしいかもしれないけど。でも知ってる相手ならなおのこと泣き寝入りなんて危なくてしょうがないよ」
「……無理、です。あたし、行きません………」
「相手彼氏?デートDVでもされたの?」
「………違います…」
「とにかく行こう」
「………行きません…」
「相手は誰だったの?泣いちゃうくらいつらかったんでしょう?なのにこのままでいいの?」
あたしが黙ったままでいると、愛さんはため息をついた。