可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。

「ご両親には?連絡したの?」

「……してません。でも連絡、しないでください………お願いします…」


あたしの言葉に強い意志を感じてか、愛さんは困ったように言う。


「何も話せない、警察にも行かない、ご両親にも連絡出来ない、それだったらうちにも置いてあげられないよ。……あたしや渚じゃ力になれないの?信用、出来ない?」


違う。これ以上、渚に迷惑掛けたくなかった。だからその場で愛さんに頭を下げて部屋を出て行こうとすると、渚が焦ったようにあたしの肩を掴んでくる。


「ちょっとどこ行くんだよ」
「………かえる…」

「どこに」
「……マンション…」

「ばッ…!おま、あいつがいるってわかってて帰るのか?……本気でヤられるぞッ」


そうだとしても、あたしには選択肢なんてない。


「おまえ、あいつに惚れてんのか」
「………わけない」

「じゃあなんで庇うんだよッ。あの変態野郎、強姦未遂の前科つけてやりゃいいだろッ」
「………出来、ないよ…」

「だからなんで!」


なんでって。聞かれたって、理由なんて言えるかよ。そう思っていたはずなのに。


「………だって、あのひと、あたしの、おにいちゃんだから……」


力の抜けたあたしの口からは勝手に言葉が漏れていた。

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