可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
痛いくらいの沈黙。渚も愛さんも、聞かされた言葉のあまりのおぞましさに顔を強張らせていた。
-----あにといもうと。
その事実をあらためて口にすると、あたしもぞっと鳥肌が立ってきて、堪え難い吐き気がこみ上げてきた。その場に蹲ると、あっというまに胃から熱いものが狭い食道をせりあがってくる。
「渚あッ、洗面器!!洗面器早く!!」
愛さんに言われて慌てて渚がふすまを開けると、廊下にはこっそり待機して聞き耳していたらしい荒野さんと哉人くんがいて。そのうち哉人くんが一気に階段を駆け下りる。
でも間に合わなくて、あたしは口内に溢れてきたものをぶちまけた。
せめて畳を汚さないようにブラウスを引っ張っり出して、その上に吐こうと広げたけど、薄いブラウスじゃ受け止めきれない。洗面器を渡されたときにはもう手遅れだった。
「…っ……すみ……ま………ッ……ン……」
「いいからっ。吐くなら吐いちゃいな。汚れたら掃除すりゃいいんだから、だから今は何も考えないですっきりしちゃいなよ」
愛さんはそう言ってあたしの背中をさすってくれる。ちいさいけど、渚と同じくらいあったかい手だ。
-----ああ、だめ。人肌とかだめだよ。泣けてくる。