可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
「悪ぃな、ウチうっさくて」
玄関を出て表に出ると、渚は真っ先にあたしに謝ってきた。
「荒野も哉人も女に飢え過ぎでさすがにウゼェな。後であいつらにきっちり言っとくから。おまえに無駄に絡むなって」
「………ううん。なんかおもしろいよ?……渚の家って、ほんとににぎやかでさ」
なんかつい、羨むような口調になってしまった。
話に聞いていた以上のにぎやかさには圧倒されてしまったけど、家の中に常に誰かしらいて、いつも明るい雰囲気が満ちているなんて、あたしには経験がなくて。
あたしのことをごく当たり前のように受け入れてくれている渚の家が、あたしにはまぶしくてあたたかくて心地よかった。
「さっきのバケツの中の汚れ物、こっち置いてあるから」
渚の後をついてやって来たのは、家の裏手にあるお庭だった。
玄関側の縁側に面した、きれいに剪定された立派な植木がある表の広いお庭とは違って、この裏庭は隣家の塀に面していて、ちいさな物置きと水場があるだけのスペースだった。
「そっちのはもう洗ってあっから」
水場の上にあるちいさな物干しみたいなスペースには、あたしのブラウスとショートパンツ、それに渚から借りていたパーカーがハンガーに掛けられて吊るされていた。