可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
「仁花?つっ立ったまま何泣きそうな顔してんだよ。おまえ寝ぼけてんのか?」
あたしは首を左右に振る。
「じゃあなんだ、悪い夢でも見たか?怖いなら今夜は俺の部屋来るか?添い寝してやってもいいけど?」
渚はいたずらっぽい笑みを浮かべて聞いてくるけど、あたしはその冗談にうまく応えられずにまた首を振った。
「遠慮するなっての。人肌が恋しいなら腕枕してやってもいいぜ?」
「………何言ってんの……出来ないクセに」
「何、マジでしてほしいのか?だったら来いよ。どうせ荒野も哉人ももう寝てんだろ」
「………バカじゃないの………腕も体もこんなひどい怪我してるのに………腕枕なんてしたら、渚痛くて死ぬよ」
痣を指さして言うと、ボロボロにされたことがよほどオトコのプライドってやつに障ったのか、渚はちょっとむっとした顔して言い返してくる。
「だからこんなのたいしたことねぇって言ってんだろ」
「………嘘、だよ、そんなの……怪我、ここまでひどいなんて思わなかった……」
「べつに平気だってのッ。痛くねぇもんは痛くねぇんだよ」
渚はあくまで否定しようとするけど、渚の姿はあまりに痛々しい。
(……渚、誰にやられたんだよ………どんなに痛かっただろ)
渚の体に浮かんだ痣をみているうちに、だんだんと呼吸が荒くなってくる。頭がぼおっとして、遠くから声が聞こえてくる。
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『この雌犬ッ!!よくもうちの聖人さんを誘惑してくれたわねっ』
目を閉じると、あまりに鮮明に般若のような白鳥えりこの形相が浮かんでくる。