可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
記憶の中の白鳥えりこはあたしが泣き叫んで許しを乞うのも聞かずに、何度も何度もあたしのことを殴りつけて踏みつけてくる。それでも怒りはおさまらないのか、ついにはベッドサイドに飾ってあったトロフィーを掴んで振りかぶってきた。
それはあたしが英語のスピーチコンテストで入賞したときに贈られたものだ。トロフィーは尖っている部分がたくさんある。使い方次第で十分凶器になるだろう。
あんなものを頭に叩きつけられたらきっとあたしは死んでしまう。なのに白鳥えりこはめいいっぱい力を込めてあたしをそれで殴りつけようとする。
『えりママッ、もうやめて、許して、痛いよ、あたし死んじゃうよっ』
惨めッたらしくあたしが喚いても、白鳥えりこは聞いちゃいなかった。あたしの頭めがけてトロフィーを振り下ろし、あたしがやめてと叫んだ途端それがあたしの額に炸裂した。
烈しい火花が散ったあたしの視界の隅に、無表情で立ち尽くしているパパが見えた。パパはまるで都合の悪いものはすべて見えないとでも言うように痛めつけられているあたしからも、あたしを痛めつけている白鳥えりこからも視線を逸らしている。
痛みのあまり意識を失いそうになる中、あたしは悟った。
(ああ、そうか。パパはあたしが死んでもかまわないんだ。だから助けてくれないんだ。えりママもあたしを殺すことになってもいいんだ)
あたしは最初から誰にも愛されない、いらない子だから-----------。
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「仁花?」
呼吸が苦しくなって体がぐらりと揺れた。
「……仁花ッ!?おまえどうしたんだッ」
あたしなんてもう消えてしまえばいいんだ。そう思って意識を手放した。