可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。




意識が暗闇に飲み込まれて、気が付くとあたしは渚の腕の中にいた。




「………渚?」

一瞬状況がわからなくてあたしが呼びかけると、渚はあからさまにほっとした顔をして悪態をついてくる。

「貧血か?………か弱ぶってんじゃねぇよ、バカ」

言葉とは裏腹に、あたしを抱き留めてくれている腕はやさしくあたたかい。あたしは自分の体を渚に預けたまま目を閉じる。

「どうした?マジで悪夢にでもうなされたのか?」

まるで悪夢を追い払うようにやさしく頭を撫でられて、あたしはなぜかたまらなく胸が痛くなって涙腺が緩みそうになる。


「仁花、大丈夫だからな。おまえには俺がいるんだから」


自信満々な渚の声。


そんなやさしい言葉なんかであたしを甘やかさないでほしい。

だってこのままじゃ、愛さんみたいな強いオンナには永遠になれなくなってしまう。渚に頼って甘えて寄り掛かる、弱いだけのオンナになってしまう。


-----でもほんとは渚に大事に守られているだけの女の子になってしまいたい。


なのに渚がそばにいてくれないとダメになってしまいそうな自分が怖くて、あたしはあたしを心配してくれている渚にわざとビッチみないな笑みをにやりと浮かべて言っていた。


「………ねえ渚」
「何だ」
「さっきの添い寝って、マジ?」

渚の顔がわかりやすく強張った。

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