可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
渚とリア先輩は美男美女で。笑えるくらいお似合いだけど。
渚は『理想のカップル』って肩書きにちょっとうんざりしてて、刺激を欲しがってるようだった。
あたしとキスする渚は、『美人な彼女がいながら、他の女子とキスしているちょっと悪い自分』ってものに、すこし酔っているようにも見える。
……酔ってるって、我ながら絶妙な言い方だ。
素面だったらこんな馬鹿げたこと続けられるはずがない。
そんなことを考えていたら、また渚の腕に引き寄せられた。
俺を見ろとばかりに顔を寄せられる。
こんな間近で見てしまうと、その気はなくてもやっぱうっかり見惚れそうになるくらいのイケメンだ。
どうやらそのイケメンは、自分が目の前にいながら、他の考え事に気を取られている女がいることが気に食わないらしい。
傲慢で勝手なヤツ。
だけどあたしも同じくらい傲慢で勝手なヤツだから。
自分からくちびるを開いて渚を誘う。
渚は満足そうに、わたしが誘い込んだその隙間に舌を捻じ込んできた。
またこっちを見ているあの女子大生には、
あたしと渚の間にも、ふたりだけで完結した「ちいさな世界」があるように見えるのかもしれない。
あたしは渚との間にあるニセモノの世界の中で、示し合わせたように悪童みたいな笑みを浮かべ合って。
バスが目的地に着くまでキスを続けた。