可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
核戦争で地球の半分は絶滅、残り半分にいる生き残ったひとたちも徐々に放射能汚染が進む中でただ死を待つしかなく、町には自殺用の薬まで配給されている-------。
渚が話してくれた映画の内容は、たしかにうんざりするようなものだった。
「子供の頃見たときはさ、なんでよりにもよってこんな絶望的な話の映画から名付けたりしたんだって腹立たしくなった」
「………だね、思った以上に救いがない話でびっくりした」
「主人公もさ、生き残った半分の方にいた潜水艦の艦長なんだけど、でも結局最後は汚染されきった自分の国に帰っていくんだよ」
「うまれ故郷で死ぬために?」
「そう、死ぬためだけに。しかも異国で知り合ったヒロインを置いていくんだ」
「なんで?どこにいたって結局助からないんでしょ?なのにどうして彼女もいっしょに連れていかなかったの?」
「艦長はその女といい雰囲気になったけど、実は妻子持ちだったんだよ。最期は彼女じゃなくて家族を思って死んでいきたかったのかもな」
「……………なにそれ。マジ最悪なんだけど」
あたしが眉を顰めると、渚が笑う。
「俺も同じこと思った。見て損したって思うくらいクソな映画だった。でもさ、最後、出航した潜水艦をその女が海辺からただずっと見送るシーンがあるんだ。置いていかれたのに、ヒロインは泣きも喚きもしないでただ静かに遠ざかっていく潜水艦を見ている。そのシーンだけは潔くて、印象に残ってる。………もしかしたらさ、今お前と一緒に観たら、嫌いだったこの映画もガキのときとは違う観え方するのかもしれないな」
「なにそれ。映画館デートのお誘い?」
「古いフィルム回してる、時代遅れな場所が今も残ってるならな」
言いながらゆっくりあたしのことを離そうとするから、あたしは思わず渚の腕を掴んでいた。その途端、渚が顔を顰める。