可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
「おまえ渚ぁっ!何してんだよっ、ずりぃってか、何家の中で仁花ちゃんとイチャイチャしてんだよ、ふざけんなッ」
哉人くんはなぜか涙目だ。
「ンだよ、起きてたのかよ。ガキはとっとと寝ろ」
「うっせぇわ、ガキ扱いすんな、2コしか違わないんだよバカっ、俺は仁花ちゃん守るために起きてたんだよっ、家の中で口説くの厳禁っていったのおまえだろッ」
「は、てめぇだって俺がいない間、日中さんざん仁花のこと口説いてたんだろ、全部荒野から聞いてるんだよ。勉強教えてもらうのにかこつけて、一問正解するたびにごほうびに仁花の写メがほしいだの撮らせろだの相当しつこく迫ってたんだってな?あ、心配すんな、仁花。さっきこいつ風呂入ってる隙にデータ全部消しといたから」
「はあ?何言ってんだよ…………って、マジで仁花ちゃんの写メ消えてるしっ!!」
自分のスマホを見て哉人くんが悲鳴を上げる。
「ざっけんなよ、死ねっ!!っていうか渚、どうせ自分のスマホに俺の仁花ちゃん画像勝手に移したんだろッ」
「……………ばーか、言いがかりはやめろっての」
「そっちがバカだ、目がわかりやすく泳いでんだよっ。おまえのスマホ、今すぐ見せろっ、やましいことねぇなら見せてみやがれっ。ってか俺に画像返せよ!!……クソクソ馬鹿荒野めッ!裏切り者ッ!なんで渚にバラすんだよっていうか、ボコボコにされたくらいで仁花ちゃんに同情されてギュってされてチューしてもらえるなら、俺が喜んでボロボロになってくるっつぅの。渚、次ボコボコにされるときは俺呼んで!よろこんで代わってやるわ!」
「ばあか、哉人にあの手刀と正拳が耐えられるかよ。すぐにぴいぴい泣いて逃げるのがオチだっての」
-------手刀?正拳……?
記憶の中に埋もれていた何かが引っ掛かるけれど、それがはっきりした答えになる前にいきなり渚が立ち上がってあたしを追い立てる。
「さてと。もう遅いしそろそろ寝るか。あ、仁花。姉貴は今日泊りだから、気にせずゆっくり休めよ」
「あっ、仁花ちゃんっ!部屋でひとりぼっちで眠るのが不安だったら、このやさしい哉人くんが一緒に寝てあげてもいいよ!添い寝と腕枕も無料サービス中ですから!ついでにおやすみとおはようのチューも付いて全部無料で!」
「-------寝るぞ」
あまりにも不機嫌そうなものすごく低い声で渚に言われて、ふざけていた哉人くんも一発で静かになった。
結局この日は渚から何があったのか聞きだせないまま、眠りに就くことになった。