可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
かわいい子
【かわいい子】
休み時間。
いつものように数学の問題集を開げているけれど、それはポーズにしかなってなくて、問題は全然頭に入ってこなかった。
(聖人が来るまで、あと3日………)
紙面をぼんやり見つめたままでいると、すこし離れた場所から男子たちの話し声が聞こえてきた。いつもくだらないことばかり話している、佐々木たちだ。
「そういえばさ、ニクちゃん、おまえさ、前に崎谷といちゃいちゃしてたよな」
佐々木たちに呼び止められたニクちゃんは、いきなり振られた話に驚いたように「はい?」と声を上げる。
「ほら。HRデーの前くらいにさ、席で山根と七瀬と一緒になって崎谷の腕さわりまくってたじゃん」
ニクちゃんは「ああ、あれね」と受け合うと、裏表のない彼らしく思ったままの感想であろうことを言い出す。
「崎谷さんの腕、つるつるでほんとすごかったよ。きっとさ、女優さんの肌とかってあんな感じなんだよ。赤ちゃんのほっぺっていうか、剥きたてのたまごっていうか。俺あんな気持ちいいもの触ったことないもん」
ニクちゃんの言葉にヘンな意図はなかったはずだ。だけど佐々木たちは途端に妙なテンションになる。
「………へえ。そんなにヤバいの?崎谷の腕」
「うん?やっぱ女の子の肌って男と全然違ってすごい細やかなんだって感心したよ、俺」
佐々木たちはその言葉に、ますますおかしな雰囲気になっていく。
「つかさ、腕ですらそんなに気持ちいいなら、他んとこ、もっとすげぇんじゃん?フツウに考えて、女は腕なんかより脚とか胸のが触って気持ちいいに決まってるし」
「確かに。実はあいつのおっぱい、超さわり心地よかったりして」
「なんだよ、佐々、おまえ根暗ぼっちなんかに興味あるわけ?」
佐々木たちがげらげら笑いだすと、ニクちゃんがいたたまれなさそうに「ねえ、佐々木さ、そういうこと言うのやめろよ」と止めに入った。でもすぐに佐々木達が反発する。
「あんなベタベタ触りまくってたんだし、肉人だって興味あんだろ?」
「おまえさ、そんなに気持ちよかったならもっと触らせてもらえば?崎谷とちょい仲良さそうだし、頼んでみればいいじゃん?触らしてくれんじゃねぇ?」
「つーかただ触るんじゃなくて揉んでこいよ」