可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。

「あたしは渚が必要だし………それにあたしのせいで渚が傷つくことがあるなら、あたしは正々堂々闘ってやりたい。今度はあたしが、佐々木のこと引っ叩いてやるから」

「馬鹿。俺のやること取るんじゃねぇよ。せいぜい俺に姫扱いでもされてろ」

「そんなのもう嫌なの。ただ渚に寄り掛かって守ってもらうだけなんて、そんなの全然あたしは望んでない。……ねえ、渚聞いて。あたし、土曜日、ちゃんとアキちゃんと会う」


渚の顔がすぐに険しくなる。けれど渚以上に顔が強張っているのはあたしの方だ。

今週聖人が水原家に迎えに来ると電話があってから、何度か渚や愛さんたちと話し合って、その日あたしは聖人と会わないことに決めていた。

今はたぶん聖人もあたしもまだ冷静に話し合うことが出来ないだろうから、再会はまた次の機会に先延ばしにした方がいいと言われて、聖人のことが怖いあたしもそれに同意した形だった。


「会うって………」


あたしの決断に、あたしのことをいちばん心配してくれている渚は絶句する。あたしの身体はその日を思ってもうちいさく震えだしていた。

「だって今回逃げても、結局何も変わらないと思うの。……ううん、もしかしたらアキちゃんの行動、もっとエスカレートするかもしれない。だからちゃんとアキちゃんと話しておきたいの」

「話すって何を?……あいつがおまえの言うこと聞くと思うのか?」
「わからない。………でもあたしはもう、アキちゃんの言いなりにはならない」


まだ正しい判断なのか自信はないけれど、渚は何も言わずにあたしの言うことを聞いてくれている。だからそれに勇気づけられたあたしは続けた。


「あたしは真奈美さんとアキちゃんの仲を引き裂いたし、それで真奈美さんを自殺未遂に追い込んじゃったし、それまでもさんざんアキちゃんのこと、我がままで振り回して大変な思いさせて来た。
だからあたしの所為でアキちゃんがおかしくなっちゃったなら、償えることはなんでもするべきだ、するしかないって……逃げたいって気持ちの一方で、そう諦めてる気持ちは今もあるの」


自分の中にあるもの、本音もずるい部分も、全部言わなきゃ正しく伝わらない気がして。あたしはとにかく胸のある物を全部吐き出すために続けていた。

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