可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。

「でも兄妹であんなことをするのは間違ってる。……あたしが壊れちゃったアキちゃんを受け止めなきゃいけないんだとしても、カラダで受け入れるんじゃなくて、もっと他に方法はあるはずだって思うの。
逃げずにちゃんと向き合うから。……だからちゃんと正しいやり方で償わさせてほしいって……ダメかもしれないけれど……聞いてもらえるかわからないけど……でもまずはそうアキちゃんに伝えたい。あたしはアキちゃんがやろうとした方法ではアキちゃんを受け入れるつもりはないんだって」


気が付くと、あたしは渚の隣、長椅子に座らされていた。頭には、渚の大きな手の感触がある。よくできましたと言わんばかりに、その手があたしの頭をわしゃわしゃかき混ぜてくる。


「………おまえここ数日、そんなこと考えてたんだ?」


違う。さっきようやく、そう決心することが出来たんだ。

ちょっとでも潔い、かっこいい女になれるように。アキちゃんに言われるがまままただ従うっていう安易な方向に流れずに、自分で考えて自分で行動して、いいことも悪いことも自分のすべてに自分で責任を持つ。そんな風になりたいって、ようやく思えるようになったんだ。


「大丈夫。おまえが本気で闘う気になるなら、俺は必ず支えてやるって言っただろ?」


渚は震えるあたしを落ち着かせようと、殊更やさしい声で囁く。


--------あたしは渚が好きだ。


クールなフリしてるけど、ほんとはすごく情に厚くて、やさしくて、ちょっとお節介なくらいで、でもときどき悪戯をしかけてくる意地悪だったりヤンチャだったりする一面がある、そんな渚が好き。

だからちょっとでもいいから渚と肩を並べられる女になりたい。どうしようもなくゲスで弱くて馬鹿な自分から変わっていきたい。もし自分の力で変わることが出来るなら、そのとき渚に自分から好きだと伝える資格が得られる気がするんだ。

ババアの言いなりになっていた頃の自分とも、ただひとりになるのが怖くて聖人に依存していた頃の自分とも、違う強い自分になりたい。なれるように、逃げずに聖人と向き合いたい。


「おまえの気持ちはわかったから。……おまえの決心、無駄にしないためにももうちょい俺も頑張ってみるか」


そういうと、渚は突然立ち上がってスマホを弄りだす。
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