可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。

「え。水原、おまえマジ?」



山根に任せっきりでほとんど言葉を発していなかった委員の塩沢が、思わずと言った様子で悲鳴みたいな声を出す。

クラスみんなの疑問を代弁するような言葉に、渚は冷めた顔で「マジ」と返す。




「……渚。おまえいいの?」



いちばん驚いているのは七瀬みたいだった。

渚に頷かれると、七瀬はあきらかにすこしほっとしたような顔をする。



渚もそれに応えるようににやっと笑う。







後ろの席に座っている、名前も覚えていない女子が前に話していたけれど。



渚と七瀬由太は地元が同じで、幼稚園から一緒の幼馴染同士だとかで。

小学生の頃は気が弱くて体の小さかった七瀬がいじめられそうになるたび、よく渚がかばっていたんだとか。



たぶんあの日、あのすごい剣幕であたしに詰め寄ってきたのも、あたしにやりこめられたのが他でもない七瀬由太だったからなんだろう。

ほかの取り巻きだったら、たぶん渚はげらげら笑い飛ばしていたはずだ。






まあ。

そんな話はともかく。





-----------学校じゃ、接点持たないつもりじゃなかったの?





にらむように渚を見てやるけれど、渚はそしらぬ顔。

視線すら合わせてこない。



周囲に何か勘付かれたりしないための、正しい態度だと思いますけど。






-----------しらばっくれやがって。




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