可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
「や。余裕なくした感じのおまえイジるの、マジたのしいとかって思って」
「なくしてねぇし」
即答すると、渚は勝ち誇ったように笑みを深める。
「そやってムキになってるとこ、おもしろすぎ」
床に転がされたまま、もう一度キスしてこようとした渚に向けて脚を跳ね上げてやった。
爪先で蹴るつもりで、踵が渚の頬に当たった。
渚は一瞬何が起きたか理解出来ないように固まって。それから顔を盛大に顰めた。
「………ってぇな。マジ信じらんねぇ。いくらなんでも普通女が顔面蹴りとかするか?つぅかお前、今パンツ見えたぞ。黒いの」
「見れば?ってかマジ腹立つわ」
絡んでこようとする渚を突飛ばして、ローテーブルの前に座りなおして問題を見る。
【問1 : aを正の定数とする。nを0以上の整数とし、多項式の…………………】
だめだ。
全然だめ。
内容入ってこない。
数字や公式が走り出して広がって繋がって、ひとつの解答に収束していくときの、あの万能感が降りてこない。
今日の午後の授業はずっとこんな感じだ。
理由は分かってる。あの忌々しい、実習時間の班決め。