可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。

背中をソファに預けたそのままの体勢で、顎を反らして新築マンションのまぶしいくらいまっさらな天井を仰ぐ。

汚れのないそれをぼんやり眺めているうちにふと思う。





------------聖人が、今のあたしを知ったらどんな顔するんだろう。









『ニカ、だめだよ』


父親ですら匙を投げたあたしに、聖人はやさしく、そして厳しかった。


『どうしてそんなことばかりするんだ?僕が駄目だって言ってるのに』


そういって、言うことを聞こうとしないあたしをいつもかなしげな顔で責めていた。


『ニカはとてもかわいい女の子なんだから。汚い言葉を使ったり、はしたないことをしちゃ駄目だよ』








あの人は、あたしに『してはいけないこと』をいろいろ教えてくれたけど。





---------------悪いことって、なんでこんなに楽しいんだろう。





いけないことだって分かってても。

渚といやらしくて馬鹿馬鹿しい遊びをしたり、汚い言葉で言い合ったり、動揺させたりさせられたり。

そんなことをしてると退屈することなんてないから。




当分は渚とキスフレンドでいることをやめられそうにもない。




そんなことを考えてしまうあたしは、やっぱり聖人の望む存在にはなれなかった。

聖人の望む、誰からも愛されるきれいな女の子になんて。






あたしは聖人が嫌がる下品なことばかりしているのに、今は聖人と一緒にいた頃のようなうしろめたさを感じることがない。



渚といると、共犯者であることがただたのしくてしょうがない。




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