可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
「……なんでいちいちかまおうとするわけ?」
七瀬由太は口いっぱいに頬張ったパンを咀嚼する。その顔には、ただ好物をたのしんでる無邪気な表情だけがある。
正直、最近の七瀬由太の行動の意図が全然読めない。
苛々しているあたしの内心を見抜いているのかいないのか、七瀬はシュガートーストを食べ終えるとあたしをじっと見つめて目を細めてきた。
「七瀬くん、あたしに仕返しでもするつもりなの?」
「さあ?どうなんだろうね」
余裕たっぷりなかわし方。……なんかムカつく。
「……いい加減にしてくんない?七瀬くんに寄ってこられるとすごい迷惑なんだけど」
「どうして?」
七瀬由太はなんの邪気もない顔で聞き返してくる。
ちょっと前までだったら、七瀬由太のちょっと幼く純真そうなこの目を疑うことなんてなかっただろう。
けど今はこの無邪気そうな目が計算なのかそうじゃないのか、見分けがつかなくていらっとする。
「自分のスペック、正確に把握しといてくれるかな。七瀬くんと一緒にいるとこ他の女子に見られたら、あたし僻まれて恨まれて面倒くさいことになるんだけど」
「それなら心配いらないよ。俺そんなモテないし」
「………現状認識甘ぇんだよ」
あたしがぼそっと呟いた言葉が耳に届いたらしく、七瀬が目を丸くする。
それからぶっと吹き出した。
どんなにきれいめ系イケメンになろうとも、破顔するとやっぱり可愛くて幼い見た目。
その顔でどこかうれしそうに言う。
「---------やっぱ崎谷さんって、すげー強烈」