可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。

七瀬由太は肩を震わせて、なぜだかひどくたのしげに笑い続ける。



「意味分かんねぇ。笑いすぎだし」



そういい捨てて、あたしがゴミをまとめて立ち上がろうとしたら。

七瀬がフィルムを剥がして食べようとしていた最後のおにぎりを放り出して、あたしの手首を掴んできた。




「………離してくんない?」

「俺が食べ終わるまで付き合ってくれるならいいよ」



あたしの手首を握り締めてくる七瀬の手の力は、ちょっとシャレにならないような強さで。



仕方なく渋々承諾すると、七瀬はちゃんと離してくれる。

それでも手首には七瀬の体温や感触がまとわり付いたまま。




----------七瀬由太の手も大きいんだ。




男子の手って、みんなこんな関節がごつごつした感触がするんだって。そんなことに気が取られる。




----------渚ほどじゃないけど。




思考の隙間で、なぜかそんなことを思い出してしまう。




< 63 / 306 >

この作品をシェア

pagetop