可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
「七瀬くんさ、実際のトコどうなの?」
無駄に健康的な食欲を見せる七瀬の姿をただ眺めていることも、無視して円周率を唱えることも出来ず。
手持ち無沙汰で、なんとなくあたしから話を振っていた。
「優等生キャラがブーム?それとも仲間はずれされてるぼっちを救済するキャンペーン中とか?それともあたしを陥れてやりたいとか思ってる?」
「………うわ。何その『陥れたい』っての」
「あたしのこと嫌いなんでしょ?……もしかして今度は罰ゲームで『ボッチとヤってこい』とかって言われたの?」
あたしの言うことに、七瀬はいちいち大げさなくらい笑う。
「はは。すげぇ過激なこと言うね。けど俺が『うん、そうだよお願い』とかって頼んだら、崎谷さん、『いいよ』とか言ってほんとにヤらせてくれそう」
「馬鹿?言わねーし」
「うん。でもなんか言っちゃいそうな雰囲気あるよね。そういう投げやりなとこがさ」
-----------以外に鋭い、繊細くん。
素直にちょっとだけ、七瀬由太の観察眼に敬意を表してやりたくなる。
そんなあたしの内情を悟ってか、七瀬由太は彼をやわらかく見せている表情を顔から消した。
七瀬のそのちょっとマジな雰囲気になった顔を見た途端。
あたしは自分が迂闊にも逃げ損なったんだということを悟った。