可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
7 --- 変化する日々と関係と

(7)変化する日々と関係と



「げ、崎谷っち、大学入試なんて解いてんの?」


休み時間に最近買ったばかりの問題集を解いてると。
あたしの後ろの席の山根が、身を乗り出してあたしの机の上を覗いてきた。



相変わらずの厚化粧。
山根が顔を寄せてくると、その顔に塗りたくられたコスメの香料臭がハンパない。

ファンデのパウダーが散ってワイシャツの襟がすこし汚れてるし、つけまとアイラインが分厚すぎて全然素顔も分からない。

山根は遠目で見ればただの派手めなギャル系で、そんな悪くもないけど。接近戦だとやっぱいかにも「ばっちりメイクしてます」感が強すぎてケバかった。




「しかも有名私大の問題じゃん。見てよニクちゃん、すごいよ崎谷っち!」


山根は隣に座ってる、陸って男子に話掛ける。


この陸って人は、苗字は覚えてないから分からないけど、名前がたしか陸人(リクト)で。

実家が雑誌やテレビで紹介されるような有名なステーキハウスを営んでて、その恩恵に与ったおかげなのか生まれつきなのか、とてもふくよかで肉付きのいい体をしてるから、『肉人(ニクト)』とか『肉屋のニクちゃん』なんですごいあだ名がつけられてた。


これで繊細な性格なら『肉』呼ばわりなんていじめだと感じたかもしれないけれど、ニクちゃんはいかにもおおらかそうな見た目まんまの性格で、自ら「ニクちゃん」の愛称で呼ばれることを歓迎しているような様子がある。



けっこうすごい神経の持ち主だと思ってる。





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