可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
新しい席になってから一週間。
山根を中心に話が広がって、七瀬やニクちゃんを巻き込んで、休み時間とか授業や自習の合間に、こうやって4人で話すことが増えた。
あたしは以前と何も態度を変えてないのに、あたしの態度や反応の悪さをまるで気にする様子がない山根と、ノリのいいニクちゃん、それにいつもいつの間にか淡々と話しに加わってくる七瀬の所為で、あたしは前ほど強固に「ぼっち」を貫けなくなっていた。
どうせこんなの一過性のものだろうと、あまり気にはしてないけど。
「そういえばさ。崎谷っちって、やっぱお母さんとこでエステしてもらったり高級な化粧品譲ってもらえたりするの?」
ニクちゃんと購買のラインナップのことを熱く談義していたはずの山根が、急に思い出したように話しかけてきた。
どう答えようかと考えてると、先におしゃべりな山根が口を開く。
「冬ちんに聞いたんだけどさ、『ERICOビューティークリニック』の、院長の白鳥えりこって。崎谷さんのお母さんなんでしょ?」
「え。まじ!?あの美魔女が?崎谷さんの?」
山根の話に、なぜかニクちゃんが食いついた。
白鳥えりこっていうのは、CMやテレビにも出演して自ら広告塔になっている大手エステサロンの有名な女社長。恥ずかしげもなく、それどころかむしろ自慢げに50代って年齢を公開してる、ただのケバいだけの出たがりババアだ。
それにしてもうちの担任。勝手に生徒の個人情報漏らすとか、ほんとクソだ。
「でもさ、なんで崎谷っちと『白えり』って、親子なのに苗字違うの?」
「白鳥えりこって芸名とか源氏名みたいなもんだから。あれウソ。本名はすげーダサいの」
あたしが適当に答えたことに、七瀬が納得する。
「ふーん。ああいう業界にも芸名とかあるんだ」
------------そんなわけあるかよ。
思わずつっこみ入れてしまいそうになったけど、誰も疑問に思ってないらしいのでうやむやにしておく。