可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。

「渚、可愛い」

「………はあ?」

「ブスで勃ちそうになったのが、そんなに屈辱?」

「……………っざけんな、勃ってねぇし。何抜かしてんだこの馬鹿ッ。……ってか、ほんとおまえ、女のクセにそういうこと言うのやめろって何度も言ってんだろ」



渚はいつものお決まりのお小言をぶつぶつ言い出す。



「ほんと、おまえねぇわ。……何抵抗もしないで簡単に自分の体ベタベタ触らせてんだよ。本物のビッチかよ」

「べつに触りたいならどうぞ?渚の好きにすれば?」



あたしが開き直ってみせると、渚の目がますます鋭くなった。



「違ぇよ、俺じゃなくて、」



渚は何かを言いかけたまま、決まりが悪そうに言葉を飲み込む。
そしてすごく不本意そうに苛々する。


もしさっきの教室でのあたしと山根たちとのやりとりが、渚が不機嫌になった理由だったら面白いのに、と思いながら聞いてみる。



「ねえ。もしかして渚、さっきの見てたの?」




面白くなさそうな表情になった渚の顔が、その答えだった。




----------可愛い。




前に渚が言っていたのは本当だ。余裕をなくしてる顔をみるのは、楽しくてたまらない。

不貞腐れた顔してる渚が可愛い。


それは七瀬由太に感じた『可愛い』と、似てるようで全然違う。

でもそれがどんな感情なのかはあたしにはまだよく分からない。




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