可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
「『渚、最近ずっとリア先輩のことばっかで、あたしのこと全然構ってくれなかったから』」
本音と嘘の境界線が、自分でもあいまいに聞こえるのは、たぶんこの一週間、ずっと退屈だったから。
渚は先週はずっと「ラブラブ」を満喫してて、休み時間も放課後もリア先輩とべったりで。
2、3日に一度はきてたメールも先週は一度もなくて。ゲスいキスのお誘いもなくて。
おまけに、ふたりがラブラブであることを思い知らされるように、あたしは不運にも、先週は一週間連続であの甘くて完璧なキスを目撃するはめになった。
別に見たくもないのに、いっそ「わざとなのか!?」と勘繰ってやりたくなるような絶妙すぎるタイミングで、渚とリア充は学校内の、あたしが行く先々でキスしまくってた。
その姿はやっぱ誰がどう見てもお似合いで、すごく自然で。
カレカノ関係が順調なんだって、言われなくても分かるほどのラブラブっぷりだった。
もしかしたら、キスフレンドって関係もこのまま自然消滅なんじゃん?
そんなこともある程度想定した。
本命の彼女と上手く行きすぎて、あたしはもう用済みなんじゃん?って。
なのに今週の週明け。
あんなにラブラブだったはずのリア先輩は、ぱったりとうちのクラスに来なくなって。
渚はずっと不機嫌で。
変わらないのは、渚からメールはないまま、突然キスを仕掛けてくるようなこともないままだってことだけ。
渚があたしに対してどういうスタンスでいるつもりなのか確かめたくなって授業を抜け出せば、まるで何事もなかったかのように『キスフレンド用のキス』をしてくる渚がいて。
あたしはあまりにも自分の立ち位置の不確定さに戸惑った。
けどたった一週間の空白の所為で、距離の取り方がわからなくなったのは渚も同じだった。