可愛げのないあたしと、キスフレンドなあいつ。
「………ってかおまえ、寂しかったら誰にでも触らせるのかよ。男なら誰でもいいのかよ、ニカは」
「山根は男じゃないけど?」
「………今、そういうどうでもいいこと言ってるか、俺は」
背中を向けたまま、渚がマジに返してくるから。
冗談のつもりで言ったあたしの『寂しかった』って言葉は、冗談にし損ねてしまった。
嘘に出来なくなった。
「『誰でもいいわけないじゃん。あたしとキスするような馬鹿、渚くらいしかいないんだから』」
それでもあたしは、嘘とも本気とも、どっちにも逃げられるぎりぎりのラインで言葉を繋いでく。
「……構ってほしいならたまにはお前からメール寄越せよ。いつもこっちから送らせやがって」
文句をいいつつも、どこか浮かれたようにも聞こえる声。
背を向けてる渚の言葉の方こそ、ほんとは冗談なのか、それとも本気なのか判断できないけど。
「ねえ。もしかして渚は、あたしから連絡来ないから拗ねてたの?」
あたしも渚の背中をみながら、マジに返していた。
「……………違ぇし」
「あたしからメール来ないから、放っておかれてるって思ってた?」
「…………うっせぇな。違うって言ってんだろ」
振り返った渚は、誤魔化すように面倒そうな顔を繕ってから、あたしに傲慢に言ってきた。
「おい。いろいろムカつくとこ、許してやるから。『キスしてください』は?」
そういってすこし乱暴にあたしの顎を掴んでくる。
「……渚がしたいなら、キスさせてあげてもいいけど?」
渚は舌打ちしつつも、あたしを引き寄せる。
「………ほんっと、可愛げねぇ」
そういいつつも、どこか楽しげに渚はキスしてきた。